珈琲にミルクが溶けていくように


いつものカフェでふっと息をつきたくなったのは、街の歯車に急かされる季節が近付いてきたからなのか。

手の中のカップをそっとのぞきながら、大人に追いつけなかったあの頃を思い出していた。

まるで珈琲にミルクが溶けていくように
遠い記憶がぐるぐると混ざり合う。

長い年月の間にこぼれ落ちてしまった夢の中身と、言えなかったいっぱいの言葉たちをすくいあげて、このゆらめきの中に溶かしてしまおう。

深まっていく秋の風によく似合う
ちょっと大人の味。

現実の世界に戻る合図と一緒に外に出ると、空にはひかえめな虹がかかっていた。

見慣れた街がさっきより少しだけ優しく感じられたのは、淡い色でほどけた心をあのときの私が迎えに来たからなのかもしれない。