せっかくなら素敵な言葉選びができる大人になりたい

先日、写真展の会場でスタッフとしてお手伝いをしていたときのお話です。

展示期間中の4日間で600名以上のお客さまにご来場いただいたのですが、ひとりでいらっしゃる方もいれば、カップル、ご家族、親子……お子さまからご年配の方まで年齢も様々でした。その中で、あるお父さんと小学生くらいの男の子の様子がとても印象に残ったのでご紹介します。

最初はちょこんとお父さんの後ろにくっついていた男の子。たまたま他のお客様がいらっしゃらなかったのもあるかもしれませんが、少し経つとお父さんの元を離れ、会場内を自由に動きはじめました。

すると、お父さんはじっくりと写真を眺めながら、1枚見終わる度に息子さんの方をふりむいて感想を伝えはじめたのです。「この海の色すごいね〜」「ここでしか見られない鳥なんだって!」など、それはちょっとした言葉なのですが、私はその様子に驚いてしまいました。

なぜかって、お子さんがどこかに行ってしまう親子の光景は期間中に何度も目にしていましたが、そういうときご両親は大体「離れないで」だったり「こっちにおいで」と声をかけていたからです。それに、もし私も同じようなシチュエーションになったら、自分の子どもにそう声をかけてしまうような気がします。

そして、「すごいね〜大きなクジラだ〜」というお父さんの言葉に興味をもったその子は、隣にかけ寄ってクジラの写真をペタペタと触りはじめました。これも期間中によく見かけた光景。「触っちゃだめだよ」と注意する方がほとんどだったので、このお父さんはどうするのかなぁと見ていると、「あ! クジラがびっくりしちゃうよ〜! ほら、海の中を気持ちよく泳いでるんだから、驚かさないように少し離れてみようね」と声をかけたのです。

あぁ、なんて素敵な言葉選びをする方なのでしょう……。ときにはちゃんと注意をすることも大切だと思いますが、展示の世界観を壊さずに離れて見るよう促す言葉を選ぶ、それは簡単にできそうで中々できないことかもしれません。きっとこのお父さんは日頃から言葉の使い方を意識されているんだろうなぁ、そしてこの子はきっと良い子に育っていくんだろうなぁ、と勝手な想像がむくむくと広がって幸せな気持ちになりました。

伝えたい相手によって自由に形を変えてしまう言葉たちは、扱い方がとてもむずかしいです。30年生きていても、伝えることを仕事にしていても、いまだに悩んでしまうことがたくさんあります。それでもきっと人間は「伝えたい」という想いの強さで言葉を生み出し進化させてきたはずなので、相手のことや自分のことを傷つける言葉ではなく、伝えることを楽しみながら優しい言葉を選んで生きていきたいなぁと思ったのでした。

穏やかな春の訪れがちょこっとだけ感じられるようになったこの頃。みなさまも優しい言葉と一緒に良い週末をお過ごしください ^^

[Photo by Kazashito Nakamura]