金木犀

金木犀の香りに
温もりを覚えたあの日から
もうどのくらいの時が過ぎただろう

「幸せなときだって、泣いてもいいんだよ」

わたしの頬につたうしずくを
そっと拭いながら

あなたはそう言って微笑んでみせた

「どうして幸せってわかるの?」

「美しいものに触れると、
いつも同じ顔をしているから」

この雨がやんだら
また来年までお別れ

秋の記憶を運んでくれる甘い香りに
「ありがとう、またね」と告げて

私は小さく空を仰いだ

あなたのもとにもこの香りが
どうか届きますようにと