しなやか文庫|帆志麻彩
もしもふたり 優しさを失いかけてしまったら
瞼の奥に想うのは 月に帰るあなたの横顔
金木犀の香りに 温もりを覚えたあの日から もうどのくらいの時が過ぎただろう
空がやんわり色付き始めると この世界はすこしだけ 時計の針が遅くなる
わたしの心の中に たくさんの忘れ物
ぽってりとした雲が浮かんでいる 今日は一月なのにあたたかい
永遠の日々が 約束されている人なんて いないというのに
凍り始めた池の水を見ながら
わたしはわたしが作り出した わたしの中のあなたに好きと言って
今日という一日が 穏やかでありますように
花が咲くことは知っていても 花が泣くことは知らなくて
咲くことのできなかったあの子に みせてあげたい世界があった
雨とは違う気配がする
もしも願いが叶うなら
日曜日の公園には特別な空気が流れている
あのころは きみと友だちだったから
自然はいつだって美しい
あの青になりたい
雲が笑い 空が歌う
この広いキャンバスに 今日はどんな色を描こう