静かな祈り


残されたわたしにできることは
言葉を贈ることだと信じてきました

でもそれは

わたしがわたし自身へ向けた
祈りのようなものだったのかもしれません

わたしのなかで生き続けてほしいという
懺悔にも似た静かな祈り

夜風にふかれて月を見上げると
あなたの声が聞こえてきそうで

夜のお散歩をしながら
月とお話することがふえました

あなたがわたしの隣にいたら
きっと少し寂しげな微笑みを浮かべて
こう言うのでしょうね

「今日も月が綺麗だね」って

こんなことを言うと
怒られてしまうかもしれないけれど

あの日から

生きているのに
生きていないみたいで

なにが現実で
どれが夢なのか

わからない世界にいます

月を見上げているときだけは
生きている心地がするけれど

そんなわたしを
あなたが望んでいないことは
わかっているから

明日という途方もない日を
受け入れてみようと思ったのです

上手にできるかはわからないけれど
上手にできなくても大丈夫だよと

あなたならきっと
そう言ってくれるはずだから