しなやか文庫|帆志麻彩
名前のない日々 心の中に咲く花を 小さく束ねた
残されたわたしにできることは 言葉を贈ることだと信じてきました
あなたは泣いていました
「記憶がいつか消えますように」
「僕らは同じ星から来たんだから」 「一緒にいないとだめってこと?」 「そうだよ」
いくつもの悲しみをくぐりぬけた人の手は 切なくなるほど優しくて
この果てしない世界の中で
記憶の面影を残して 折り返す季節を空に想う
もしもふたり 優しさを失いかけてしまったら
瞼の奥に想うのは 月に帰るあなたの横顔
金木犀の香りに 温もりを覚えたあの日から もうどのくらいの時が過ぎただろう
ぽってりとした雲が浮かんでいる 今日は一月なのにあたたかい
永遠の日々が 約束されている人なんて いないというのに
わたしはわたしが作り出した わたしの中のあなたに好きと言って
今日という一日が 穏やかでありますように
花が咲くことは知っていても 花が泣くことは知らなくて
もしも願いが叶うなら
日曜日の公園には特別な空気が流れている
あのころは きみと友だちだったから