しなやか文庫|帆志麻彩
名前のない日々 心の中に咲く花を 小さく束ねた
凍り始めた池の水を見ながら
わたしはわたしが作り出した わたしの中のあなたに好きと言って
花が咲くことは知っていても 花が泣くことは知らなくて
咲くことのできなかったあの子に みせてあげたい世界があった
雨とは違う気配がする
もしも願いが叶うなら
海の上にうつる月の光を ぼんやりと眺めたくなった夜
ふたつの世界の片隅で 宵の中の想いが混じる
空は海に恋をして 光のかけらに心を溶かす
海は空に恋をして おなじ色に染まってみせた
代わり映えしない明日の価値を どれだけの人が知っているというのでしょう
わたしはここにいるだけで あなたの願いを叶えられているのでしょうか
霧にまもられて淡く滲む光のなか 明日を目指して鳥たちが飛ぶ
つかの間の夢をみるように 季節の余白にこぼれた光