あれからいくつもの季節が過ぎたけれど、あなたは変わらず幸せな日々を過ごしていますか? そうだといいなぁと思いながら、こうして筆をとってみました。
あなたが長い旅路から帰ってきて、それと入れ違うように私が旅に出たんだっけ。
あなたから送られてくる写真があまりにも素晴らしかったから、手紙が届くたびに「行ってみたい」とわくわくしていたのを覚えています。
私もね、たくさんの世界をみてきたの。近い場所から遠い国まで、色々なところを旅してきた。世界は私が思うよりもずっと、優しさと美しさに溢れていたわ。
あなたが隣にいないことに慣れるのには正直時間がかかったけれど、私はあのとき飛び出したことを後悔してない。
新しいことが次から次へと起こり、変化と刺激だらけの毎日はとても楽しかったわ。だけど、ほんの少しだけ日常が懐かしくなって戻ってきちゃった。まだ旅の途中のつもり。
そうそう、覚えてる?
2人で一緒に迷い込んだ森のこと。
私あの場所が気に入ってしまって、あなたが旅に出ている間に小さな家を作ってみたの。家と言っても小屋みたいな仕上がりだけど、なかなか快適に暮らせているわ。
水も空気も澄んでいてとても静かよ。
今はその森から手紙を書いています。
時々窓辺に遊びに来る鳥をみていたら、あなたが自分の前世は鳥だったと話していたことを思い出しました。きみの前世も思い出してみてほしい、と言っていたことも。
昇る月を眺めながら考えてみたけれど、たぶん私は丘の上に一本だけある木だったのよね。「ぼくと一緒に空を飛んでいた鳥だったら嬉しい」って言ってくれていたのに、ごめんね。
だけど、やっぱり何度考えても私は木だったんじゃないかと思うの。頑張り屋さんのあなたは懸命に翼をぱたぱたさせているはずだから、飛び疲れてしまったときにはひと休みする場所になれるでしょう?
それで私は満足だったのだけど、きっと少しだけ寂しかったのね。私の上を悠々と飛ぶ姿を見上げていたら、あなたの目にうつる世界を知りたくなって、それで私は人間に生まれ変わったんじゃなかったかしら。あなたと一緒に自由に空を飛んでいる鳥たちに本当はずっと憧れていたのかもしれないわ。
はっきりと思い出せるわけではないけれど、きっとそうだと思うの。来世はどんな関係で出会えるのかちょっとだけ楽しみね。気が早いよって笑われちゃうかな。
そういえば、
結局あの魔法使いには会えたの?
話したいことも聞きたいこともたくさんあるので、また手紙書きます。
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